遠藤周作の『沈黙 -サイレンスー』実写映画化

今回は、2017年1月21日に公開される『沈黙 -サイレンスー』です。

この作品は、クリスチャン遠藤周作の『沈黙』(1966年)をマーティン・スコセッシ監督が映画化したものです。
アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバーなどの出演陣に加え、浅野忠信、窪塚洋介などの俳優が起用されていることも話題となっています。併せて、マーティン・スコセッシ監督が初めて遠藤周作の『沈黙』を読んで、28年の歳月が流れたとのことです。なんという情熱と情念でしょうか。

物語の内容とその背景を見ていきましょう。
キリスト教禁教令は、三度の事件を契機として発せられることになります。
第一に、徳川家康が呼び寄せたフランシスコ会は、スペイン商船の関東入りの便宜を図れませんでした。
第二には、1610年に起こったデウス号事件です。
デウス号事件は、キリシタン大名、有馬晴信がマカオで家臣を殺された報復として、ポルトガル商船ノッサ・セニョーラ・デ・デウス号を沈没させた事件です。
第三には、1612年の岡本大八事件です。
岡本大八事件は、岡本大八、有馬晴信の間に所領を巡って贈収賄問題が生じたという事件です。岡本大八、有馬晴信、双方とも、キリシタンであったことが問題視されました。
また、同時に、この頃、徳川幕府の幕藩体制固めも大詰めを迎えていたといわれています。徳川家康は、キリシタン武士達に好意的な豊臣方と彼らが結びつくのを恐れていたとも、租税法を守るためともいわれています。禁教令は、さまざまな目的や体制の邪魔になったカトリックを排除するために好都合だったのです。
1614年には、金地院崇伝がキリスト教国は商船を寄こし、取引目的だけではなく、邪法を広め、日本国の国政を揺るがすものであるとする起草が出されました。
1616年に徳川家康が逝去すると、後を継いだ徳川秀忠はキリスト教禁制を強めました。

物語の主要な舞台は、江戸時代初期の日本。キリシタン弾圧に遭遇したポルトガル人教父フェレイラが過酷な拷問を受けて、棄教します。
1609年、物語の主人公ロドリゴの師匠、フェレイラは日本に到着し、1633年に囚われるまで宣教活動を行いました。フェレイラは天正遣欧使節であった中浦ジュリアンとともに、穴吊りの刑に処せられました。穴吊りという刑法は、穴の中に逆さづりにするというものでした。それでも、簡単には死ねないようにと工夫されたものでした。逆さづりにすると血が頭に集中します。こめかみに小さな穴をあけて、そこから血を出します。穴の中に汚物を入れ、地上では大音響の音を鳴らして精神的苦痛を与えるというものでした。5時間にも及ぶ穴吊りの刑で、フェレイラは転びます。皮肉にも、中浦ジュリアンは結局、穴吊りの刑でも棄教せず、殉教しました。
フェレイラの弟子、宣教師ロドリゴは、師匠が棄教したのかどうか真相を探ろうと、日本に向かいます。しかしキチジローの密告により、奉行所に囚われてしまいます。ロドリゴは師匠と再会しますが、ロドリゴ自身が棄教しない限り、拷問を受ける信者が赦されることはないのだと言われ、信じる道を進むのか、目の前にいる者を救うのか、葛藤し苦悩します。やがて、ロドリゴは、神はなぜ沈黙したままなのかと神を疑い始めます。

このようにこの作品は、西洋と日本、ふたつの体制、思想の違いに翻弄される人の悲しみと苦悩が如実に表現されたものです。

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